体重は3年前とほとんど同じ。なのに、椅子に座るたびにベルトの上に乗ってくるお腹だけが、どうしても目につく——そんな方は多いと思います。じつはお腹まわりの肥満は、体重計ではなくメジャーで判定するもの。だから数字が変わっていなくても、しっかり該当していることがあるんですよね。なぜお腹だけ落ちにくいのか、2週間で何を変えるとウエストの数字が動くのか、順番に見ていきます。
- 日本のメタボ健診での腹囲の基準は男性85cm、女性90cm。体重が標準でも該当します。
- 本当の問題はお腹そのものではなく内臓脂肪。糖尿病・高血圧・脂質異常症への入り口だからです。
- 糖質を極端に断つやり方は筋肉から削られるので、数か月後にかえって太りやすくなります。
体重は標準なのにお腹だけ出ている。まず何を測る?
メジャーを1本出して測ってみると、思っていたより衝撃を受けます。腹囲はパンツのサイズではなく、おへその高さで、息を吐いた状態で水平に測るのが健診での測り方。肋骨の下と骨盤の上のあいだ、ちょうどおへそのラインですね(内臓脂肪が多くておへそが下がっている場合は、肋骨下端と骨盤上端の中間で測ります)。
特定健診(いわゆるメタボ健診)の基準では、男性85cm、女性90cmを超えると内臓脂肪型肥満が疑われます。ところが「自分はウエスト78cmのパンツだから大丈夫」と安心している方が本当に多いんです。
パンツはお腹の下に引っかけて履きますよね。だから実際の腹囲より5〜10cmほど小さく出るのが普通です。78cm(約31インチ)のパンツを履いていても、メジャーで測ると90cm近い、というのはよくある話なんです。
手足は細いのにお腹だけぽっこり——いわゆる「隠れ肥満」もここで引っかかります。体重は標準の範囲なのに、筋肉量が少なく体脂肪率だけが高いタイプですね。

厚生労働省の国民健康・栄養調査では、BMI25以上の肥満は男性でおよそ3人に1人、女性で5人に1人前後という数字が繰り返し出ています。さらにメタボリックシンドロームの該当者・予備群は、40〜74歳の男性でおよそ2人に1人、女性で5人に1人程度とされています(数字は調査年によって多少上下します)。
3人に1人、2人に1人。よその話ではない、ということですね。
「お腹ではなく血管の問題」とはどういう意味?
脂肪はどこにでも同じようにつくわけではありません。まず皮膚の下に順番に貯め込まれ、そこが飽和すると、今度は内臓のすき間に入り込んでいきます。これが内臓脂肪です。
内臓脂肪は腹部CTで面積を測ります。肥満症の診療ガイドラインでは100cm²を超えると病気のリスクが高いと見なされます。同じ脂肪でも皮下脂肪よりずっとやっかいなのは、これが単なる倉庫ではなく、ホルモンのように信号を出す組織だからなんですよね。
内臓脂肪が増えるとインスリンが効きにくくなる「インスリン抵抗性」が生じます。中性脂肪は上がり、善玉のHDLコレステロールは下がる。その状態が数年積み重なると、糖尿病・高血圧・脂質異常症がセットでついてきます。
お腹が出ているのは見た目の問題ではなく血管の問題、という言い方はここから来ています。
調べていると、糖尿病の患者さんを対象にした調査で6割以上が腹部肥満に該当し、しかも30〜40代のほうが割合が高かった、という数字がよく引用されています。調査機関や年度まで確認しきれなかったので参考程度にしていただきたいのですが、若い世代のほうが比率が高いという傾向自体は、複数の資料で繰り返し出てきます。
メタボ該当者の割合も、健診が始まった頃から目立って減ってはいません。派手な自覚症状がないまま、静かに増えているんですね。
「肉だけ食べれば痩せる」のに、なぜ数か月後にもっと太る?
ご飯を抜いて肉でお腹を満たすやり方。最初は本当によく落ちます。問題はそのあとなんです。
私たちの体で、脳と赤血球は事実上ブドウ糖しか使えません。だから糖質を極端に減らすと、体は足りない糖を作るために筋肉のタンパク質を分解しはじめます。体重計の数字は下がっているのに、減ったのは脂肪ではなく筋肉、という状況が起きるわけです。
筋肉が減れば基礎代謝も一緒に下がります。その状態で元の食べ方に戻すと、以前より太りやすい体になっている。リバウンドは理由もなく起きているわけではないんですよね。
大規模なコホート研究でも、糖質が総摂取カロリーの50%前後のときに死亡率がもっとも低かったと報告されています。少なすぎても多すぎても上がるU字カーブでした。どちらにせよ極端は損、ということです。
それと、豚バラや牛カルビは「タンパク質」というより、タンパク質に脂がたっぷり乗ったかたまりに近い食材です。禁止するのではなく、部位を変えるだけで同じ一食のカロリーが大きく変わります。

「運動1時間がお酒1杯で帳消し」は本当?
いちばん納得がいかないのがここです。アルコールがそのまま脂肪に変わるわけではないのですが、脂肪の分解を後回しにしてしまうんです。
体はアルコールを毒として認識し、まずこれの処理にかかります。そのあいだ脂肪の分解は待機状態になり、血中の中性脂肪は上がる。しっかり歩いて帰ってきてからの冷たい1杯が、その日の成果をかなり消してしまう理由です。
ざっと計算してみました。日本酒2合でおよそ380kcal、ビール500mlで200kcal前後。両方いくと約600kcalで、体重70kgの人が早歩きで2時間ほど歩いて消費する量に相当します。
ここにおつまみが加わると、計算がまったく合わなくなります。1日15分歩いている人でいえば、飲み会1回で平日4日分が吹き飛ぶ計算ですね。
場面をひとつ思い浮かべてみましょう。週末の昼下がり、ベランダや庭先で炭を起こしている家。テーブルには豚バラ、牛カルビ、ソーセージが積まれ、大人はビールとハイボールを回している。子どもはその横でスナック菓子をつまんでいる。
ほほえましい光景ですが、栄養学の目で見るとなかなか手強い組み合わせです。一食に脂質・アルコール・精製された糖質が同時に入ってくる場だからです。

おもしろいのは、こういう家庭ほど「うちは家系だから」という話が出てくることです。でも、純粋に遺伝子だけで説明できる肥満はごく稀。結婚して入ってきた家族まで数年後には同じようにお腹が出てくるのを見ると、遺伝子より食卓と習慣のほうがずっと強い、というのが目に見えてわかります。
整理していくと、よくある誤解はだいたいこの5つに集約されました。
| よくある思い込み | 実際は |
|---|---|
| 体重が標準なら大丈夫 | 腹囲が超えているだけで内臓脂肪型肥満とみなされます |
| 毎日泳いでいるからお腹もすぐ凹む | 運動だけで食事量に勝つのは難しいです |
| 太るのは遺伝だから仕方ない | 純粋な遺伝型は稀で、習慣の影響が大きいです |
| ご飯さえ抜けば痩せる | 筋肉から先に落ちてリバウンドしやすくなります |
| お酒は低カロリーのものを選べばいい | 種類に関係なく脂肪の分解が後回しになります |
2週間、これだけ変えてみませんか
腹囲は比較的反応が早い数字です。脂肪のなかでも内臓脂肪から先に落ちるから。だから2週間もあれば、メジャーの目盛りで違いを確かめてみる価値があります。
- 週3日は休肝日にする。やめろという話ではなく、間隔をあけるということ。毎日飲んでいたのを週2〜3回に減らすだけで、さきほどの600kcalが数日分まるごと消えます。
- 夜9時以降の締めの一杯・夜食をやめる。寝る前に食べると翌朝の空腹時血糖が上がります。空腹時血糖は100mg/dL未満が正常、126mg/dL以上が糖尿病型の基準です。
- ご飯は3分の2、おかずはそのまま。なくすのではなく減らす。半分より下げてしまうと、さっきのU字カーブの左端に行ってしまいます。
- 肉は部位だけ変える。豚バラ・牛カルビの代わりに、豚ヒレ・もも肉・鶏むね肉・魚へ。禁止すると続かないので、置き換えるほうが長持ちします。
- 1日15分、少し息が上がる程度でOK。夕食後に15分早歩きするほうが、週末に2時間まとめてやるより効きます。きつい運動は2週間もちませんから。
記録は体重計ではなくメジャーで。同じ曜日、同じ時間、同じ姿勢で週1回あれば十分です。
今夜ひとつだけやるとしたら
引き出しに転がっているメジャーを出してみてください。男性85cm、女性90cm。この2つの数字と自分の数字の差が、これから2週間の目標です。
糖尿病も高血圧も、初期はまったく症状がありません。体が信号を出す頃には、すでに薬を始める段階になっていることが多いんです。なんともない今が、むしろいちばん良いタイミングなんですよね。
メジャーを1周巻くのに、10秒あれば足りますから。